【小説】怒り【感想】

 

怒り(上) (中公文庫)

怒り(上) (中公文庫)

 

 ハワイの帰りの飛行機でつらつら読みました。上下巻でしたが、トータル4時間位で読み終わったと思います。

 

 

ここからネタバレあり

まず、これはミステリー小説ではありません。人の心の動きや感情を描写したヒューマンドラマみたいな小説です。

問題は、最後まで読まないとそれに気づかないことです。しかし、大抵の人はそれに気づかずに誰が犯人なんだということに重きをおいて読むと思います。

 

なぜなら、冒頭がいきなり殺人事件から始まるからです。プロローグを読んだ時、天童荒太の「家族狩り」みたいな面白そうな話が始まった!とテンションが上ったんですが、最後まで読んでも全くその事件の動機や詳しい経緯が掘り下げられることもなく終わってしまいます。

自分の予想では登場人物の3人の生い立ち不明の人物が実は時代背景をずらしただけの同一人物じゃないかと思ったんですが、全然そんなことはなくつまらない結果でした。

 

だいたいこの小説のタイトルが「怒り」というのがおかしいと思います。犯人が「怒」なんて単語を使うほどの状況下でもないと思いますし、他の登場人物も怒りというよりは自己嫌悪といった言葉のほうが合うんじゃないでしょうか。

そもそも犯人の「怒」という文字をつかった気持ちも全然分からないし、まあ頭のおかしいやつなんだろうけどだったらなおさらそれをタイトルにしたら読者をミスリードさせるだけでしょう。

 

トータルとしてはかなり満足度の低い小説でしたが、節々で良いシーンはありました。まず愛子と洋平が田代を信頼できず自己嫌悪におちいるところです。全然良くないだろ!と言われるかもしれませんが、あのどうしようもない感じなんかいいんですよね。

あとは優馬が直人に「お前を疑ってるんだぞ」といった時の返事。「そう言うってことは信じてるってことだろ」いいですよね。この逆もしかりですよね。

 

今映画も上映中ですが、逆に内容がわかった今、映画がめちゃくちゃ見たいです。演技も評判いいですしね。

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